

【前回までのおさらい】
方法①~⑪までは、WISC-Ⅳ検査の概論、FSIQや各指標がどのような“知能”を推定しているのか、さらには、指標同士の関係性を解説してきました。ここからは、事例(架空)をもとに、WISC-Ⅳ検査結果から推測される“知能”の特徴が、日常の困り事といかに繋がっているのか検討し、具体的な対策・心がけ等を提示していきます。
<参考>
方法① 全検査IQ(FSIQ)が弱点
方法② 言語理解指標(VCI)が弱点
方法③ 知覚推理指標(PRI)が弱点
方法④ ワーキングメモリー指標(WMI)が弱点
方法⑤ 処理速度指標(PSI)が弱点
方法⑥ VCI>PRIまたはVCI<PRIの差が大きい
方法⑦ VCI>WMI またはVCI<WMI の差が大きい
方法⑧ VCI>PSIまたはVCI<PSIの差が大きい
方法⑨ PRI>WMIまたはPRI<WMIの差が大きい
方法⑩ PRI>PSIまたはPRI<PSIの差が大きい
方法⑪ WMI>PSIまたはWMI<PSIの差が大きい
こんな傾向はありませんか?
(こういうところが見られたらあてはまるかもしれない)
【事例Fさんの場合】
Fさんは、何の前触れもなくふと学校を休んでしまいます。好きで通い始めたはずの習い事や学習塾も、なかなか長続きしません。このあたりFさん本人に詳しく聞いてみたところ、何か大きな出来事があったわけではないが、「なんとなく周りと馴染めない」と、ずっとひそかに悩んでいたようです。また、時々日常の些細な生活音がストレスとして感じられることもあるようです
〇WISC-Ⅳ検査を受けたところ・・・

全検査IQ(FSIQ)は「平均」を示しています。4指標も、言語理解(VCI)・知覚推理(PRI)・処理速度(PSI)は、概ね「平均」域にあたりますが、ワーキングメモリー(WMI)はこれらを上回り、「平均の上」に位置しています。
つまり、このプロフィールから、周囲の同級生と比較した場合、Fさんはワーキングメモリー(WMI)に長けており、その他の力も概ね引けを取らない程度に有していることが推測できます。
ただし、ここで注目すべきは、“個人の中での能力差”です。すべての指標が、同年代の平均以上を示していたとしても、個人内での指標間差が大きくなっている場合、いわゆる“生活のしづらさ”を感じやすいと考えられています。
したがって、Fさんの例では、ワーキングメモリー(WMI)>言語理解(VCI)・知覚推理(PRI)・処理速度(PSI)の間で、比較的大きな差があるために、一般的には容易なことであっても繰り返し続けることが難しかったり、“当たり前”とされる行動をとること自体に躓いてしまったりすると考えられます。
・ワーキングメモリー(WMI)>言語理解(VCI)の差
短期記憶(≒WMI)に長けている一方、長期記憶(≒VCI)は苦手に感じるかもしれません。何かしら情報が与えられた瞬間、ごく短い時間の処理においては、非常に優れた力を発揮できますが、そのこと自体を蓄積し、反復することは、難しいかもしれません。何事も“継続させること”が課題となる、と表現できるでしょう。
・ワーキングメモリー(WMI)>知覚推理(PRI)の差
記憶力には、“ムラ”が生じやすくもあります。聴覚的な情報処理の過程(≒WMI)は得意とする一方、視覚的な情報処理の過程(≒PRI)は、不得手に感じるかもしれません。方法⑬ PRIだけ高いで提示した具体例とは反対に、人の名前は“響き”としてよく覚えているが、そのときの表情・着ていた服などは印象に残りづらい、などといえるでしょう。
・ワーキングメモリー(WMI)>処理速度(PSI)の差
何かしらの口頭指示を、内的に理解・操作すること(≒WMI)が出来ても、外的に実行・達成すること(≒PSI)に躓きやすいかもしれません。頭の中(心の中)では、どうすればいいのかわかっているのに、いざ実行するとなると、その考えばかりが先行し、素早く行動に移せない場合が少なくないでしょう。

〇 生徒の対策
①周囲の“雑音”は最小限に留めよう!
相対的にWMIが高い場合、もしかすると聴覚的に過敏なところがあるかもしれません。周りの人がそれほど気にならない生活音(例えば、足音や咳払い、隣の席の人が板書する鉛筆の音など)がどうしても気になってしまうこともあるのではないでしょうか。多くの人がいる環境での対策は難しいところもありますが、自室や塾など、一人きりで勉強する際は、できる限り静かな環境を選ぶ・作ることも大事かもしれません。
②自分なりのペースを確立しよう!
周りのやり方(勉強方法)に合わせようと努力するよりも、まず自分にあったやり方を見つけましょう。友だちがテキストを5ページ進めたからといって、絶対に5ページやり遂げる必要はありませんし、逆に5ページ以上進めたって構いません。周囲と比較するばかりではなく、自分に合ったやり方・ペースを優先してみましょう。
③反復すること”に慣れよう
②に記した通り、自分に合ったやり方・ペースは、できる限り繰り返し“反復”してみましょう。反復に慣れることで、苦にならない“ルーティン”を、少しずつ増やしていきましょう。
〇 講師のサポート
①周囲の“雑音”は、なるべく軽減できる環境づくりを
生徒の対策①で示したように、広く一般の生徒に比べて、聴覚的な過敏さがあるかもしれません。普段生活していて、“当たり前”に感じる音さえも、集中を妨げ、気分を害する要因になっている可能性も考えられます。できる限り、音の刺激が少ない、静かな環境づくりに協力していただけるとより良いかと思います。
②生徒本人のペースを第一に
集団と比較し、そのペースに合わせるよう促すよりも、生徒本人のペースを優先させてあげましょう。その際、生徒自身に目標を立ててもらうとより良いでしょう。周囲が決めた目標ではなく、自分自身で決めた目標であることが大事かと思います。
③“反復すること”に協力体制を
短期記憶に長けている一方、長期記憶にはつながりにくくあります。そのために、“反復すること”自体が難しい可能性が考えられます。生徒本人のやり方・ペースが最優先ではありますが、これを維持してもらうためにも、適宜声掛けをしたり、講師自身が実践している工夫やコツを教えてあげたりするとより良いように思います。
〇 役に立ちそうなリソース
- WMIの高さをより活かすために、“考えること”はあなたの強みとなるはずです。好きなこと・興味があることについて“考える”のはもちろんですが、何かに躓いた際、少し悩んでしまうのも考える力が備わっているからともいえます。ちなみに、せっかく考えたことは次に活かす意味でも、記憶だけではなく、記録に残しておくこともお勧めします。
- マインドマップ
一度に関連事項を色々と考えることが出来るこのタイプにうってつけ。関連事項をどんどん書き出し、想起できないことは調べながらマップを仕上げていくだけで整理でき、理解が深まり、定着にもつながります。
- <動画>【WISC知能検査】ワーキングメモリ指標(WMI)だけが高い場合の最新対策法を解説
- <動画>【WISC知能検査】知覚推理指標(PRI)とワーキングメモリ指標(WMI)の差が大きい場合の最新対策法を解説
- <動画>【WISC知能検査】言語理解指標(VCI)とワーキングメモリ指標(WMI)の差が大きい場合の最新対策法を解説
- <動画>【WISC知能検査】ウィスクの結果でVCIとWMIに差がある場合の改善方法
- <動画>ウィスクの結果でPRI(知覚推理指標)とWMI(ワーキングメモリ指標)に差がある場合の改善方法【WISC知能検査】
- <動画>ウィスクでWMI(ワーキングメモリー)が低い場合の改善方法
- <動画>学習障害(LD)で算数や数学の平面や空間図形の問題が苦手な場合の対策法
- 学習障害(LD)で英語の単語の意味が覚えられない時の対策法【発達障害】
- <動画>【学習障害(LD)】算数の九九(掛け算)が覚えられない場合の対策法【発達障害】
- 薄井晶著 『方法別冊』(不登校・学習障害・発達障害・WISC ver.)ファストブック(2022)
〇学習障害がある方が学べる個別指導の専門塾
WISCの結果を生かして特性を考慮しながら受験指導
SMKの完全個別ゼミ

〒182-0026 東京都調布市小島町1丁目4−6 三田調布シティハウス 107
TEL:042-426-7295
京王線調布駅から徒歩1分。
甲州街道の小島町交差点すぐそば。
塾の前に自転車がとめられます。

〒154-0017 東京都世田谷区世田谷3丁目2−2 メルシー世田谷 103
TEL: 03-6804-4076
東急世田谷線世田谷駅、下高井戸方面下車、歩いてすぐ。
通りを渡って美容院のある角を曲がってください。看板が見えます。
*駐輪場完備

〇 生徒・ご父兄の声
勉強が好きになり、受験を希望するほど自信がつきました
S H くん ご父兄
合格校:自由の森学園中学校
おかげ様で息子が希望する中学に合格することができました。
もっと早い時期(最初に世田谷ゼミさんを
訪ねた5年生の1学期)に勉強を始めれば
多くの選択肢があったのかなと思いましたが、
6年生の空きが本人の意思で受験を決められる
時期だったと思います。6年生の初めに入塾致し
まして毎回授業を楽しみにし、宿題に取り組んで
学習の楽しさを教えていただいたおかげです。
他の塾を訪ねたときは「いくら勉強が好きでも、書くのが遅い子は
思考の速度を他の子の何倍も上げないと学習は難しい」とのお話でした。
なのですが中川先生に本人のペースで見守り、
個別に教えていいただいたおかげで、一層勉強が
好きになり、受験を希望するほど自信がつきました。
とても感謝しております。合格してからも塾に
通っていて嬉しいです。本当にありがとうございます。
塾に長く通うことができて、希望の中学校に行くことができました
S.H.くん
合格校:自由の森学園中学校 (文理進学)
最初は少し緊張して
いましたが、優しく教えて
もらったおかげで気持ちよく
通うことができました。
勉強も楽しかったです。
そのおかげで長く通う事ができて、
希望の中学校に行くことができ
ました。
ありがとうございました。
がんばります。
内申点を上げるための小テストや提出物の指導を仰ぎました。
東京都 調布市 A.Y.さんご父兄
合格校:鶴川女子高合格
千葉県から引越ししてから、まず大手の塾に
通っていましたが田舎とは違い本人のペースで授業を行ってもらえず
個人塾を探していました。
たまたまネットで見つけ勉強の嫌いな娘は通う事を目標に
こちらの調布ゼミに入塾し、少しずつ慣れて行けたと思います。
勉強内容を本人の理解度を考えゆっくり教えて頂いている様に
感じました。
今でも勉強は好きではありませんが
何より本人が嫌がらず通っている事が本当に嬉しいです。
ありがとうございました。
<監修>
臨床心理士・公認心理師 堤 梨乃
SMK 薄井晶