WISCの結果を持っている 方法⑫

VCIだけ高い

sakamoto4


sub_vis

    

【前回までのおさらい】

方法①~⑪までは、WISC-Ⅳ検査の概論、FSIQや各指標がどのような“知能”を推定しているのか、さらには、指標同士の関係性を解説してきました。ここからは、事例(架空)をもとに、WISC-Ⅳ検査結果から推測される“知能”の特徴が、日常の困り事といかに繋がっているのか検討し、具体的な対策・心がけ等を提示していきます。

<参考>
方法① 全検査IQ(FSIQ)が弱点
方法② 言語理解指標(VCI)が弱点
方法③ 知覚推理指標(PRI)が弱点
方法④ ワーキングメモリー指標(WMI)が弱点
方法⑤ 処理速度指標(PSI)が弱点
方法⑥ VCI>PRIまたはVCI<PRIの差が大きい
方法⑦ VCI>WMI またはVCI<WMI の差が大きい
方法⑧ VCI>PSIまたはVCI<PSIの差が大きい
方法⑨ PRI>WMIまたはPRI<WMIの差が大きい
方法⑩ PRI>PSIまたはPRI<PSIの差が大きい
方法⑪ WMI>PSIまたはWMI<PSIの差が大きい

 

〇 こんな傾向はありませんか?

【事例Sさんの場合】

 

授業中はきちんとノートを取り、先生の話にも熱心に耳を傾けています。基本的には成績良好で、目立って苦手なことはありません。ところが、抜き打ちで行われるテストでは、なかなか思うような力を発揮できず、落ち込んでしまうことも少なくないようです。また、友だちとの他愛のないやり取りであっても、自身が発した言葉、あるいは相手から言われた言葉が気にかかり、繰り返し考え込んでしまい、場合によっては身の回りのことさえも手につかなくなってしまうようです。

【WISC-Ⅳ検査結果】


WISC-Ⅳ結果 Sさんのプロフィール

【事例解説】

全検査IQ(FSIQ)は「平均」を示しています。4指標も、知覚推理(PRI)・ワーキングメモリー(WMI)・処理速度(PSI)は、概ね「平均」域にあたりますが、言語理解(VCI)はこれらを上回り、「平均の上」に位置しています。

つまり、このプロフィールから、周囲の同級生と比較した場合、Sさんは言語理解(VCI)に長けており、その他の力も概ね引けを取らない程度に有していることが推測できます。

ただし、ここで注目すべきは、“個人の中での能力差”です。すべての指標が、同年代の平均以上を示していたとしても、個人内での指標間差が大きくなっている場合、いわゆる“生活のしづらさ”を感じやすいと考えられています。

したがって、Sさんの例では、言語理解(VCI)>知覚推理(PRI)・ワーキングメモリー(WMI)・処理速度(PSI)の間で、比較的大きな差があるために、抜き打ちテスト等のイレギュラーな事態にはうまく対応しづらかったり、“言語的”に一人思い悩んでしまったりすることが考えられます。

 

・言語理解(VCI)>知覚推理(PRI)の差

言語的な情報処理(≒VCI)を得意とするために、非言語的な情報処理(≒PRI)が追い付かなくなる可能性が考えられます。これを対人コミュニケーションに置き換えると、言語的なニュアンス、言葉尻などは、敏感に受け取る一方で、微妙な表情の変化や形容し難い空気感には、いくらか鈍感である、と表現できるかもしれません。

 

・言語理解(VCI)>ワーキングメモリー(WMI)の差

長期記憶(≒VCI)に長けている一方、短期記憶(≒WMI)は苦手に感じるかもしれません。何度も繰り返し経験し、慣れた環境においては、非常に優れた力を発揮できますが、新奇の課題や、不慣れな環境では、十分な力を発揮しづらくあるかもしれません。

 

・言語理解(VCI)>処理速度(PSI)の差

言葉を使ってじっくり考える力(≒VCI)が十二分に備わっているため、自身の言動を振り返り、見つめ直せること(内省力)が強みです。ただし、これに比べると、切り替える力(≒PSI)がやや弱いため、必要以上に思い悩んでしまったり、反復的に考え込んでしまったりもしやすいでしょう。

tanaka3

〇 生徒の対策

  • ①なるべく事前に計画・準備をしておこう!

  • イレギュラーな事態で動揺することをできる限り防ぐため、事前の計画・準備を心掛けましょう。今日のうちに明日の持ち物をチェックしたり、出掛ける時間はあらかじめ決めておいたり。スケジュールが明確になっていることは、安心・安全につながるでしょう。

  • ②時には「ま、いいか」も必要です!

  • ①で示したように、事前準備は“完璧”であることに越したことはないでしょう。しかし、いつ何時もその通りに事が進むとは限りません。想定通りいかなかったとしても、落ち込み反省し続けるばかりではなく、時に「ま、いいか」と自分を許してあげることも必要かと思います。

  • ③自分なりの“切り替え”スイッチを見つけてみよう!

  • 言葉を扱うことが得意なために、時にあれこれ考え過ぎて、身動きがとりづらくなってしまうかもしれません。ぐるぐると同じことを考え続けてしまわないように、“切り替え”のスイッチ(例:とりあえず好きなことをやってみる、軽く身体を動かしてみる)を見つけておきましょう。


〇 講師のサポート

  • ①事前にスケジュールは共有しましょう

  • できる限りイレギュラーな事態は取り除いてあげましょう。スケジュールが明確であり、それが周囲とも共有できていることで、本人の安心感は増すように思います。

  • ②“完璧”を求めすぎない姿勢で

  • 本例は、イレギュラーな事態であっても、“完璧”を求めてしまい、結果うまく立ち行かないと、必要以上に落ち込んでしまいやすくあるタイプです。“完璧”を求める姿勢は大事にしつつも、時に「ま、いいか」と力を抜けるよう、ほどよいバランス感覚を育ててあげたいものです。講師側も適度に「ま、いいか」の姿勢を見せてあげても良いかもしれません。

  • ③“切り替え”の練習を

  • 内省力の高さは、本人の強みですが、時にぐるぐると同じことばかりを考え続けてしまい、次の行動に移れないのが難点です。本人自身で、“切り替え”のスイッチを用意することを促しつつも、周囲は“切り替え”やすい声掛けをしてあげることも必要でしょう。


〇 役に立ちそうなリソース

    ・VCIの高さをより活かすために、“書くこと”、“読むこと”を習慣づけてみると良いかもしれません。例えば、方法② 言語理解指標(VCI)が弱点等でも紹介している日記を書くこと(これは、内省的になりやすい傾向を、いったん言葉にして外に置いてみる、といった面でも有効でしょう)、または、興味を持った分野、好きな作家の本を読むこと、などです。“得意”であることは、あなたの“好き”にもつながり、ひいては自信にもつながるように思います。

     

  • <動画>【WISC知能検査】ウィスクでVCI(言語理解指標)とPRI(知覚推理指標)が高くWMI(ワーキングメモリ指標)とPSI(処理速度指標)が低い場合の改善方法

  •  

  • <動画>【WISC知能検査】言語理解指標(VCI)とワーキングメモリ指標(WMI)の差が大きい場合の最新対策法を解説

  •  

  • <動画>WISCのVCI(言語理解指標)とPRI(知覚推理指標)を活かした過去問解説

  •  

  • <動画>WISCのVCI(言語理解指標)を活かした文章問題の過去問解説

  •  

  • <動画>学習障害(LD)で英語の単語の意味が覚えられない時の対策法【発達障害】

  •  

  • <動画>学習障害(LD)で算数や数学の平面や空間図形の問題が苦手な場合の対策法

  •  

  • <動画>【WISC知能検査】全検査IQ(FSIQ)の最新知見|生徒の対策と講師のサポート

  •  

  • <動画>【学習障害(LD)】算数の九九(掛け算)が覚えられない場合の対策法【発達障害】

  •  

  • <動画>学習障害(LD)で文章を読むのが苦手な場合の対策法【発達障害】

  •  

  • <動画>学習障害(LD)で「ひらがな」が上手に読めない場合の対策法【発達障害】

  •  

  • 薄井晶著 『方法別冊』(不登校・学習障害・発達障害・WISC ver.)ファストブック(2022)

〇学習障害がある方が学べる個別指導の専門塾

WISCの結果を生かして特性を考慮しながら受験指導

SMKの完全個別ゼミ

調布ゼミ
完全個別 調布ゼミ
〒182-0026 東京都調布市小島町1丁目4−6 三田調布シティハウス 107
TEL:042-426-7295
京王線調布駅から徒歩1分。
甲州街道の小島町交差点すぐそば。
塾の前に自転車がとめられます。

 

世田谷ゼミ
完全個別 世田谷ゼミ
〒154-0017 東京都世田谷区世田谷3丁目2−2 メルシー世田谷 103
TEL: 03-6804-4076
東急世田谷線世田谷駅、下高井戸方面下車、歩いてすぐ。
通りを渡って美容院のある角を曲がってください。看板が見えます。
*駐輪場完備
sato2

 

〇 生徒・ご父兄の声

常に息子のペースで

K.W.君 ご父兄 M.W.様
合格校:工学院大学付属中学校、城西川越中学校、日本工業大学駒場中学校

調布ゼミの門を叩いたのは5年生の4月頃。
集団塾を転々としたものの、成績は振るわず、
自信をなくしていました。
そんな息子を見て「〇〇君のペースでやりましょう」と
奥井先生はおっしゃいました。

先生は授業においては間違ったところを必ず自宅で復習
させるという指導をされていました。また宿題においては
必要な箇所やポイントを押さえつつ、出されていました。

常に息子のペースで指導していただき、無事に 第一希望校に合格できました。
自信をなくしていた息子に寄り添い、励まし、
導いて下さった奥井先生には感謝の気持ちで 一杯です。本当にありがとうございました。

 

個別授業で分かるようになるまで

東京都調布市 H.M.君
合格校:都立神代高校 大成高校(文理進学)

中三になると同時に授業を受け始めました。学校では分からないところを授業で質問することはありませんでした。クラスの人の時間をうばってしまうからです。
ですが個別授業なので分からないところを聞くことができ分かるようになるまでていねいに教えていただきました。
またなんで分からないの?という感じが無かったので気軽に質問できました。勉強や模試の結果について客観的な意見を聞くことができたのも良かったです。
本当に感謝でいっぱいです。

 

内申点を上げるための小テストや提出物の指導

東京都調布市 R.Y.君 ご父兄
合格校:大東高校 都立武蔵村山高校

中学3年生の6月より転塾し、都立受験本番の2月までお世話になりました。
内申点を上げる為にも、日々の授業での小テストや提出物の指導を仰ぎ、どうにか私立併願を取ることができました。
第一志望の都立高校選択の際も、迷う度に面談をしていただき、
親子共々、納得のいく高校を選ぶことができました。
一般受験に向けての準備を進める中で、推薦受験の作文指導や面接もフォローして頂き、心強かったです。
LDのグレーゾーンという中で、本人も粘り強く頑張った受験でした。
先生方には、本人へのインストール方法を考えて頂き、力をつけて下さった事、
深く感謝しております。
これからも最後まで諦めない精神で頑張っていって欲しいです。


<監修>
臨床心理士・公認心理師 堤 梨乃
SMK 薄井晶